利根川から荒川へ
埼玉の中山道は、利根川の河川敷近くを通過して、その後、荒川に出会います。熊谷宿から鴻巣宿(こうのすじゅく)までの間が、この荒川に最接近する区間です。後に、蕨宿(わらびじゅく)を出た後に、埼玉県戸田市から東京都北区に向けて、雄大な荒川を渡ることになりますが、中流域の熊谷辺りも、川幅は相当なもの。
関東平野を造り広げた、主要河川のひとつ荒川は、街道を江戸へと導いていきます。
9番深谷宿(ふかやじゅく)
西の常夜灯を過ぎて、吞龍院(どんりゅういん)の朱塗の鐘楼があるクランクを曲がると、造り酒屋の煙突が近づきます。蔵元の店構えも風情があって、めずらしく、宿場の香りが漂う一角です。
街道を先に進むと、今度は左手にレンガ造りの煙突が。また、道沿いには、所々に、レンガ造りの建物も見られます。
※深谷宿の様子。
深谷市は、レンガの町として有名です。格調高い建築で有名な東京駅は、深谷市で造られたレンガが使用されているとのこと。深谷駅は、逆に、その東京駅を模して造られたということです。
深谷駅を訪れると、階上の駅舎には、レンガが貼りめぐらされ、それこそ東京駅のミニチュアのよう。なかなか趣がある駅舎です。*1
※深谷駅。駅前広場から階上のデッキに上ったところ。
深谷駅には、前回の「歩き旅のスケッチ35」で記したように、渋沢栄一氏の銅像が建てられています。その像は、深谷の駅を側面から見守っているようで、氏の出身地を優しく抱擁されているような印象です。
中山道からは、少し離れたところではありますが、深谷駅に立ち寄れたことは、良い思い出になりました。
私たちの今回の行程は、ここまでです。本庄宿から11.5Kmの道のりでした。
深谷の宿場の後半は、どちらかと言うと、雑然とした街並みです。宿場町の面影はなく、街道沿いには、商店や住宅が連なっています。途中、1軒のお店のガラス窓に、往時の宿場の町割図が貼りだされていました。
宿場町を伝え、残そうとされている、お店の方の思いに触れて、何故か心がホッとするような気持になりました。
※左、深谷宿の後半の街の様子。右、店のガラス窓に貼りだされた、往時の町割図。
熊谷宿へ
深谷宿の東の常夜灯を過ぎると、街道は、国道17号を横切る歩道橋へ。街道は、歩道橋を越えて、その先、深谷市の住宅地の中を進みます。
※東の常夜灯。
ここから先、街道は、住宅や小さな畑地が点在する地域を通過して、熊谷方面に延びていきます。
※お断り
残念ながら、ここから先、再び機器操作の問題で、ほとんど写真がありません。従って、風景など、うまくお伝えすることができないことをお許し下さい。
「歩き旅のスケッチ」は、一気にスピードをあげて、日本橋を目指します。
旧道は、落ち着いた雰囲気の住宅などを眺めながら、熊谷の方向に延びていきます。途中、国道17号をまたいで旧道を進み、あるいは、国道に吸収された道を歩きます。
次第に住宅の密度が増して、国道の沿道サービスの事業所なども目立ってくると、いよいよ熊谷の市街地です。国道の右手には、JR高崎線が走っています。
8番熊谷宿
街道は、一旦国道から斜め左に入り込み、少し細くなった道沿いの、旧市街地風の街並みを進みます。この辺りから、熊谷宿になるようです。
旧道の先には、八木橋百貨店です。百貨店の前には、「熊谷宿」の道標もありました。
この先の熊谷宿は、街中の国道に吸収されて、その面影はありません。あとは、道標のみが、宿場の名残を伝えています。
鴻巣宿へ
熊谷宿を過ぎると、街道は、国道を右折して、JR高崎線の踏切に向かいます。熊谷駅を遠巻きに見るような道筋です。
踏切を越え、歩き進むと、新しい住宅地から次第に集落風の景色へと変わります。そして、街道は、荒川の河川敷の方向へ。
途中には、荒川の堤防も歩きます。緑深い荒川堤防。中流域でも広大な河川です。堤防近くには、マンションなども点在し、JR高崎線の行田駅がすぐ近くにありました。
この日の私たちの行程は、行田駅で終了です。深谷宿から熊谷宿までの11Kmと、熊谷宿から行田駅までの5km。合わせて、16Kmの道のりでした。
鴻巣宿へ
翌日は、朝、行田駅に降り立って、鴻巣宿を目指します。朝の荒川堤防には、ランニングをする人などもいて、気持ちの良い初夏の空気を感じたものでした。
街道は、堤防を左に下って、吹上駅の方向へ。昔からの集落の中を縫うように進んでいきます。一旦、南から北へと踏切を渡り、吹上駅に近づくと、その周辺は新しい街並みです。
その後、南方向に踏切を越えて、少しの間、鉄道を左手に見て進みます。畑地や住宅を見ながら、片側1車線の道路を進んでいくと、時折、水田などの農地も広がります。
住宅が次第に密集してくると、街道はもう一度、高崎線の踏切を、南から北に越えていきます。そして、右方向が鴻巣の街。鴻巣宿に到着です。
7番鴻巣宿(こうのすじゅく)
鴻巣宿は鴻巣市の中心地。鴻巣駅近くに広がっています。鴻巣市は、宿場町だったようで、宿場はこの街の原点です。街道沿いには、神社をはじめ、歴史を感じる建物なども所々に見かけます。
ただ、全体的に街並みは整備され、時の流れには抗えない雰囲気です。
鴻巣宿のシンボル的存在は、鴻神社(こうじんじゃ)。コウノトリの言い伝えを伝承する神社の様で、市の名称も、この伝承が元になっているのでしょうか。
※鴻神社。 鴻の宮とも言うようです。
鴻巣宿の中央付近からすぐ南の方向には、JR高崎線の鴻巣駅があります。この辺りは、街も整備されていて、商業施設なども整っていました。
中山道はこの後、埼玉の中心部に向かっていきます。