旅素描~たびのスケッチ

気ままな旅のブログです。目に写る風景や歴史の跡を描ければと思います。

歩き旅のスケッチ5・・・中山道、三留野宿から福島宿へ(前編)

南木曽駅から

  

 落合の石畳を経て、新茶屋にある木曽路の入口を通過したら、宿場町としてあまりにも有名な、馬籠宿です。そして、馬籠峠の険しい山道を越えると妻籠宿。この間は、たくさんの観光客が歴史ある街道の雰囲気を楽しんでいます。

 妻籠宿を過ぎると、街道は途端に人気が無くなります。私たちは前回、妻籠宿を出て山中を進み、41番三留野宿の直前、南木曽駅で歩みを止めました。今回は、その南木曽駅から出発です。2泊3日で木曽福島を目指します。

 

 三留野宿(みどのじゅく)

 中央線の南木曽駅(なぎそえき)に降り立ったのは、秋の気配を感じる頃でした。少し肌寒い日もあって、服装に心配しながらの木曽路です。

 南木曽駅は、駅舎は木曽川に面していますが、中山道は裏側です。駅から少し後戻りして、線路に架かる歩道橋を越え、街道に入ります。

 この辺りの中山道は、左手に木曽川の対岸を見ながら、右側に迫る山の裾を傾斜に沿うように続いています。しばらく進むと、突然、新しく整備された道路が。そこを渡ると三留野宿です。ここは、宿場町の面影はあまり残っていませんが、木曽の谷あいに静かに佇む町並みは、何となく趣深いところです。往時の賑わいを想像しながら街道を進みます。

 宿場のはずれに近づくと、右に上る急な坂道があります。看板などもあり、この坂道が中山道と思い上っていきましたが、どうも様子が違います。GPSで位置を確認したところ、道を外れているようです。よくよく案内を見ると、古い時代の道とのこと。急いで元に引き返し、国道19号方面に進んでいきました。

 

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※左、南木曽駅。右2つは三留野宿 

 

 40番野尻宿(のじりじゅく)へ

 三留野の宿場を出ると、国道19号に入ります。ここからしばらくは、木曽川に沿って延びる国道の歩道をひたすら北に進みます。途中、柿其入口(かきぞれ)で国道を離れ左手に。中山道は、木曽川近くの堤防道に変わります。

 そのうち、ちらほらと家が見えてきますが、空き家が多いようです。小さな集落まで歩くと、右上に十二兼駅(じゅうにかねえき)が。南木曽駅の北隣の駅にやってきました。

 街道はその後、中央線と国道の横断を繰り返し、野尻の宿場に近づいていきます。*1

 野尻宿に入る目前に、右手上方を見ると、”おんたけ”というお蕎麦屋さんの看板が見えました。国道沿いのお店ですが、中山道側からも裏階段を利用して行くことができます。このお店は人気のお蕎麦屋さんということで、たくさんの客で賑わっていました。 

 

 野尻宿

 美味しい蕎麦に満足し、野尻宿へ。中山道は、野尻の町中を曲がりくねりながら縦断していきます。七曲(ななまがり)と呼ばれる宿場町は、その面影を残しながらひっそりと佇んでいます。

 野尻宿には中央線の野尻駅があります。木曽路は、主な集落には駅があるので、歩く者にとっては安心です。体力と相談して、駅を区切りに中山道をつなぎます。

 野尻宿はまた、街道の案内看板もよく整備されています。地元の方の街道への思いが伝わってきます。

 

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※左、野尻宿。右、野尻宿を終え、須原宿に向かう。

 

 大桑の町

 野尻宿を出てしばらくは、上の写真のような、のどかな道を歩きます。そして、再び国道19号に合流。国道の歩道を進みます。大桑の町が見えると、大桑駅の案内がある直前で国道を渡り、中央線の踏切を横切ります。町中に続く道が中山道ですが、街道の案内がないために、少し戸惑ってしまいます。*2

 大桑には中央線の駅があります。1日目は、ここで終了。電車で宿のある町に向かいました。

 

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※大桑の国道から木曽の山々を見渡す。

 

 大桑から39番須原宿へ(すはらじゅく)

 2日目、電車で大桑駅に戻り、ここから街道歩きをつなげます。次に向かうのは須原宿。この日の予定は、38番上松宿(あげまつじゅく)の直前にある、寝覚の床(ねざめのとこ)です。

 大桑からは少し山道に入ります。それでも道路沿いには民家もあり、山の中という感じではありません。途中、天長院の禅寺があり、そこを越えると道はなだらかに。山里の集落を幾つか通り、木曽川支流、伊奈川の橋を越えると、右手に岩手観音が見えてきます。小高い所にあるお堂を見ながら先を急ぐと、中央線沿いの山すそ道に出て、ほどなく須原の宿場が見えてきました。

 

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須原宿への道中。

 

 須原宿

 須原宿は道幅が広く、すこし湾曲しているものの、ほぼ真っすぐに延びています。中山道は、宿場に入って少し脇道にそれるようですが、今では幅広の道がメイン通りになっています。

 道の脇には水が流れ、石碑や案内版、屋根型の行灯などが各所に配置されています。須原宿は、木曽の山並みに包まれた宿場町ではありますが、ひっそりと佇むというよりも、少し堂々とその存在を主張しているように見受けられました。

 宿場のはずれには、須原駅があります。駅を越えると国道19号に合流です。

 

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須原宿

 

 寝覚の床へ

 須原宿を出て、国道19号の歩道をひたすら北へ。木曽路はすべて山の中、ということではありますが、川伝いに進む道も結構長く続きます。緩やかな上り道を木曽川の上流に向かいます。

 途中、倉本駅の少し手前に、”武しろ”という、うどんのお店がありました。味噌煮込みうどんは絶品で、体力も回復。さらに歩みを進めます。

 倉本駅の近くでは、街道を南へ下る旅の方と出会いました。少しの間、情報交換です。江戸からは、碓氷峠和田峠の難所の話。私たちは美濃路の難所の話。お互いに健闘を祈って別れます。

 途中、中山道は、国道と旧道を交互につないで延びています。そして、小野の滝に。車では見過ごしてしまうような場所にこの絶景の滝は隠れています。

 

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※小野の滝

 

 小野の滝を越えると旧道に入ります。元々国道19号だったようですが、今は新しい道が川伝いにつながり、旧道はひっそりとしています。急な坂道が続き、渓谷の橋へ。そこから上は駒ケ岳への登山道のようです。

 街道は、橋を越えると下り道に。そして、2日目の目的地、寝覚の床*3に到着です。

 1日目はおよそ13Km、2日目は15Kmほどの道のりでした。

 

*1:この辺り、木曽川の対岸に阿寺渓谷という清流の川も確認できます。

*2:おそらく江戸から都を目指す人にとっては、この道は迷うことはありません。都から江戸に向かう私たちにとって、この後、何回か道を間違えそうになることに。案内板などがあればと思うばかりです。

*3:寝覚の床は、木曽川の流れが巨石の壁で狭まったところで、浦島が玉手箱を開けた場所という伝説が残っています。浦島伝説は日本中のあちらこちらで残っていますが、こちらの臨川寺というお寺には、亀の甲羅や浦島の釣り竿なども残っています。